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潤滑チェック装置として振動診断センサーを使う

機械診断・監視 |

メンテナンス作業で行われる作業の一つに、ベアリングへの注油があります。しかし、毎回のメンテナンス作業で注油を行えば良いというものではありません。ベアリングへの注油が必要かどうかをどのように判断すればいいのでしょう。

シールが損なわれていなければ、ベアリング内にグリースが留まることが出来、潤滑状態を長期にわたって維持することが出来ます。そのため毎回注油をしなくても潤滑を維持できます。しかし、シールが損なわれていると頻繁な注油が必要となってしまいます。
なお、注油の効果は潤滑状態を保つためだけでなく、ゴミ・異物などが入ることを防ぐためでもあります。すなわちグリースが異物混入に対するシールとなります。

現在、潤滑状態を知るためのツールは数多く市販されています。工業用の聴診器や、超音波を使用した診断ツールが多くあるかと思いますが、高周波振動測定センサを用いて潤滑状態を知ることも可能です。

簡単に潤滑状態をチェックするためのツールの一つが、ベアリングの健康診断装置の Bearing Defender を使用する方法です。Bearing Defender はスマホと連携したセンサーでベアリングの異常を診断する装置ですが、ベアリングの状態を数値で表示してくれます。
この数値は ベアリング欠損係数 と呼ばれ、0 ~ 12の数値でベアリングの健康状態を示します。

次に、実際の注油前後の Bearing Defender の測定結果をご紹介します。

次の図はBearing Defenderアプリの画面です。速度・加速度・変異およびベアリング欠損係数(DEF)が表示されています。

赤枠で囲ったベアリング欠損係数の部分に着目すると、X, Y, Z軸の数値はそれぞれ7.56, 8.71, 7.76です。6 ~ 9の範囲であり、何らかの問題が発生している可能性があります。
グリースガンで注油を行い、データが平均化するまで3 ~ 5秒程度待って数値に変化が無いかを確認します。変化が無い場合はさらに注油を行う必要があることもありますが、注油量は各機器に応じた量に留めてください。
過剰なグリスアップは悪影響を及ぼす場合もあります。

ベアリング欠損係数が減少した場合、潤滑が正常になって改善したと考えられますが、30分ほど待ったうえで再度確認を行ってください。再確認でも欠損係数が低いままであれば、潤滑状態が適切になったと考えられます。

注油を行ってもベアリング欠損係数に変化が無さそうな時や、再確認時に数値が大きくなってしまう場合は、ベアリングに損傷が生じている可能性があります。その場合、更なる調査が必要です。

今回の例では次の図のように注油によってベアリング欠損係数(DEF)の数値は小さくなりました。よって、潤滑の改善に一定の効果があったと考えられます。

ただし、この機械の問題が解消されたわけではありません。
Bearing Defender の画面を見ると、写真の下部分に3つのアイコンが並んでいます。このアイコンの色により、異常の内容を示しています。

一番左のアイコンはベアリングそのものの故障の有無を示し、黄色くなっています。黄色表示は注意が必要な状態であることを示しています。

真ん中のアイコンはミスアライメントやアンバランスの問題を示しています。今回の例では赤くなっていることから主な問題はミスアライメントやアンバランスであろうことがわかります。

また、最も右のアイコンはその他の異常の有無の推定ですが、緑色になっており特に異常は見つかっていないことを示しています。

今回の例では結果的にミスアライメントやアンバランスの問題があることがわかりました。
この結果を見ると、わざわざ初めに注油を行ったことは無意味だったと思う方もいるかもしれません。しかし、初めに注油を行ったことは無意味なことではありません。アライメントやバランシングの作業に比べ、注油は容易に対応可能であることが多く、潤滑の問題であるかミスアライメントやアンバランスの問題であるのかを見極めるために、最初に注油を行って改善できるのかを確かめることは意味のある作業です。

また、Bearing Defender はワイヤレスセンサーを用いるので、簡単に異なるベアリング位置に移動させることが出来ます。装置に取り付けてアプリの赤いボタンを押して約10秒で結果が得られることから、診断するベアリングが複数あっても素早くチェックを行うことができます。また、個々のベアリングをきちんと診断することで注油不要なベアリングを見極め、過剰なグリスアップによる弊害の発生の抑制にも繋がります。

また、 Bearing Defender と同じセンサーを用いる Machine Defender により、ベアリングだけでなく装置全体のより詳細な診断を行うことも可能です。

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